堀井雄二×市村龍太郎

1.本編の『ドラゴンクエスト』をDSで

発売を前にして

堀井. 今度の『ドラゴンクエストIX』は、携帯ゲーム機で作るということで、本当はもっと早く完成できると思っていたんです。ユーザーのみなさんもそのように考えていたと思うんですけど、思った以上の大作になってしまって、完成までに時間がかかってしまいました。みなさんには長い間お待たせして申し訳なかったんですが、今はボク自身も、早く発売してほしいという気持ちでいっぱいなんですね。いろいろ新しいことに挑戦している『ドラゴンクエスト』なので、みなさんの反響を早く聞きたいなあと。だから、発売がとても楽しみです。
市村. やっと完成できたという思いですね。そもそも『ドラゴンクエストIX』でやろうとしたのは、すごく壮大なことでしたし、携帯ゲーム機で出すとは言っても、高いところをめざして作りましたので、それがようやく発売日を迎えることができるということで、とても感慨深いですね。
ただ、今回の『ドラゴンクエストIX』は、発売後もWi-Fiを使った配信など、いろんな仕掛けを用意しているんですよ。ですから、プロデューサーとしてはこれからが本番だと思っています。ソフトが完成しても、気を緩めることもなく、気分はずっと戦闘モードです(笑)。

DSで『ドラゴンクエスト』を作ってみたかった

堀井. ニンテンドーDSで『ドラゴンクエスト』を作ってみたかったんですよ。DSはWi-Fiとかワイヤレス通信がとてもカンタンにできるし、そういった機能を活かせば、新しいゲーム性も出せるなと。それに、気軽に遊べるのもDSの良さだと思うんですね。
昔からそうなんですけど、ボクは『ドラゴンクエスト』を、わりと気楽に遊べるゲームにしたいと思って作ってきたんですよ。真剣にやってもいいし、ちまちま遊んで、“ながら”でも楽しめるみたいな。そのコンセプトは、じつは今もそんなに変わってないんです。今の時代、テレビを独占するというよりはむしろ、テレビを見ながらゲームをしてる人も多いじゃないですか。そういったゲームプレイスタイルもありだし、それでも楽しめるものを作ろうと思ったわけです。
市村. 『ドラゴンクエスト』というゲームは、レベルアップしただけでちょっとした満足感があったりするじゃないですか。次のレベルが上がるまでちょっとやって、それから寝ようかとか、そんな気楽さがあると思うんです。そういった気軽さとDSは、とても相性がいいと思うんですね。そこで、今作ではその良さをさらに活かすために、短いスパンで成果が出るような遊びの要素も追加しました。
それに『ドラゴンクエスト』シリーズは、やっぱりできるだけたくさんの人たちに遊んでもらいたいんです。前作の『ドラゴンクエストVIII』(※1)の開発が終わってから、堀井さんも含めてみんなで、「次はどのハードで作ろうか?」という話になったとき、DSで出すのは自然な流れだったんですね。ただ、不安がなかったと言えばウソになります。前作で実現できたグラフィックを評価してくださったお客さんも多かったですし、その続編が携帯ゲーム機で出るわけですから。でも、レベルファイブ(※2)さんが最初に作ってくれたグラフィックを見たとき、「DSでもすごい表現ができるんだ」と驚きましたし、ハードの性能では据置型ゲーム機にはかなわないにしても、そのぶん、シナリオや企画で勝負できると思ったんですね。
堀井. 初めの頃の『ドラゴンクエスト』は、記号的なグラフィックでしたが、そこからユーザーのみなさんがイメージを膨らませて楽しんでくれたと思うんです。ドットだけで描かれた、とてもシンプルな絵であっても、そこからすごい光景を想像できた、みたいな。鳥山さん(※3)が描いた絵を、最初に目に焼き付けておけば、後からドット絵を見ても、すごい絵に見えるものなんですよね。
グラフィック以外での表現も同じで、たとえば、いちばん最初にファミコンソフトを作ったとき、ダメージの表現をメーターにするか、数字にするかで、当時はちょっと悩みました。でも、棒のメーターがどんどん減っても、目に見えてるぶん逆に、さほど痛さが感じられない。むしろ数字で「5」とか「10」とか表現したほうが、痛みを感じてくれると判断しました。そんな感じで、昔からプレイヤーの想像力や感覚を大切にしてきたところがあるので、『ドラゴンクエスト』のひとつの方向性として、必ずしもグラフィックの緻密さにこだわる必要はないと考えていました。
*1.
『ドラゴンクエストVIII』:『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』。2004年11月に発売された本編シリーズ第8作目。同シリーズ初の完全3Dを実現した。
*2.
レベルファイブ:前作の『ドラゴンクエストVIII』から開発を担当するゲームメーカー。ニンテンドーDSでは、『レイトン教授』シリーズや、『イナズマイレブン』などのソフトも制作している。
*3.
鳥山さん:漫画家の鳥山明氏。『ドラゴンクエスト』シリーズ全作のキャラクターデザインを担当するほか、「Dr.スランプ」や「ドラゴンボール」など、代表作は多数。

友だちと遊べる『ドラゴンクエスト』を

堀井. 「『ドラゴンクエストIII』(※4)のようなゲームを、友だちと遊べたら楽しいだろうな」と思ったのが、DSで開発をはじめたキッカケです。ネットワークゲームというのは、かなり敷居が高いと思うのですが、DSのワイヤレス通信を使えば、カンタンに目の前にいる友だちと会話をしながら、いっしょに冒険ができるようになる。ひとりで遊ぶ延長で自然にマルチプレイに入っていけるような、そんなゲームにしようと考えました。
市村. 誤解のないように言っておきたいのですが、ひとりでももちろん、十分に楽しめるように作っています。物語やシステムがたっぷり楽しめるのは、本編シリーズの伝統ですからね。ただ、堀井さんから話を受けて、プロデューサーの立場で考えても、「みんなで遊べる『ドラゴンクエスト』」は面白そうだと思ったんです。もちろんそれは、これまでのシリーズにはなかった新しい挑戦でもありましたが、挑戦しがいのあるテーマだと思ったんですね。そこで、今作の開発の基本コンセプトを「ずっと遊べる、みんなで遊べる」に決めました。ずっと遊べるようにするために、さまざまな楽しみを用意し、みんなで遊べるようにするために、エンディングを迎えた人もそうでない人も、マルチプレイでいっしょに世界を冒険できるようにしようと。そうして、今回の新しい『ドラゴンクエスト』が完成したんです。
*4.
『ドラゴンクエストIII』:1988年2月、ファミコンソフトとして発売された『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』。スーパーファミコンやゲームボーイカラーでもリメイク版が発売されている。
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