浅野智也×田中弘道

1.16年

単なる移植でなく、完全に作り直すという決断

田中.

単なる移植だったらもっとラクに早くできたと思うんです。ご存知のように、何度かいろんな機種で移植を試みていたんですが、ROMの容量の問題だとか、技術的な問題、あるいは開発側の人の問題などでお蔵入りになって、なぜか16年間、完成に至らなくて。その結果、時間が経ちすぎてしまったわけです。

16年前のオリジナル(FC版)のグラフィックは、たった3色しか使えないわりに、結構描き込んであったんですが、今移植するにあたって3色のままではさすがに時代遅れですので、2Dで移植する場合でもどのみち全部描き直さなきゃいけない。どうせ手間がかかるなら、いっそ3Dで作り直してもいいんじゃないか、と思ったのが始まりでした。また、ニンテンドーDSというハードを活かしたものがやりたいとも思いました。

FFIIIをニンテンドーDSで制作するに至った経緯

田中. 2004年のDSの発表会*1で「ニンテンドーDSでFFIII出します」って発表が突然あったのがきっかけでした。ええー聞いてないよ〜状態で。当時、私はFFXIを手がけていました。オンラインゲームのFFXIをはじめるにあたって、以後XI以外の開発には関与できる時間がないと思っていたんですが、社内には、オリジナル(FC 版)の全企画書なり全データなりを持っているのは元々私しかいなかった。以前までと同様に、単純移植ということでしたら他人に任せっきりにできたんですが、さすがに16年も経ってしまっていて、ここまで寝かせてしまうと、もはや単なる移植では済みそうになかったので、安易に他人にまかせられませんでした。オリジナル(FC 版)のプレイヤーも新規のプレイヤーもどちらにも納得していただけるような、ちょうどいい落しどころみたいなのは、ファミコン版のFFIIIを制作したメンバーにしか判断しにくいものではありますので、自分がリメイクをやらなきゃいけないのかな、と。オンラインゲームの開発や運営をやりながらでしたけど、浅野という相棒に恵まれまして、ベストなリメイクができたんじゃないかと思います。
*1.
2004年10月7日に開催された「NINTENDO DS PREVIEW!」。FFIIIのリメイクが発表された。

これまでリメイクを実現できなかった理由

田中.

当時ファミコンでも、技術的にギリギリのところで飛空艇の高速スクロールなどをやっていたと思うんですけど、あのへんを移植先のハードで実現する方法がなかったんです。あと、規模ですね。移植するにしてもかなりのボリュームがありますから、手軽にというわけにはいかない。グラフィックデータを2Dで描き直したりマップを移植するだけでも相当時間がかかってしまう。なので、なかなかいい形で完成させることができませんでした。

数年前に一度、3Dの家庭用機上でポリゴンでの移植が途中まで進んでいたんですけど、そっちのほうは、移植とはいえこれだけの規模ですから、それを完成に導けるだけの開発スタッフが社内で思うように確保できず、残念ながら途中でストップしたようです。

今作のスタッフ構成

田中. 当時、オリジナル(FC版)に関わっていて社内に残っているプランナーとして私と青木*2、音楽の植松さん*3、さらに、FFXIのアートディレクターの相場*4や、FFXIIのキャラクターデザイナーの吉田*5が中心になって大まかなコンセプトを固めました。実際の開発はマトリックス*6という開発会社のスタッフが中心です。
*2.
青木和彦(あおき・かずひこ)スクウェア・エニックス所属のゲームクリエーター。ファミコン版FFIIIのモンスターデーターなどを手がける。ゲームキューブ「FFCC」ではディレクターを務めた。今回はバトルバランスを監修。
*3.
植松伸夫(うえまつ・のぶお)。ゲーム音楽作家。FFシリーズの音楽を手がけている。
*4.
相場良祐(あいば・りょうすけ)。スクウェア・エニックス所属のクリエーター。今回アートディレクションを担当。
*5.
吉田明彦(よしだ・あきひこ)。スクウェア・エニックス所属のクリエーター。今回キャラクターデザインを担当。
*6.
株式会社マトリックス。コンピュータソフトウェア等の企画・開発を行うゲーム開発会社。
浅野. マトリックスは、ドラクエV*7のリメイクでいい作品を作っていたので、今回も参加してもらいました。
*7.
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』。1992年にスーパーファミコン版が発売。2004年にはリメイク版が発売された。

FFIIIをリメイクするということに対してのプレッシャー

田中.

これまで何度か試みたFFIIIの移植は、自分が他のプロジェクトで動けず他人任せにしていたので、「できればいいなあ」くらいの気持ちでした。でも今回はオリジナルから時間が開きすぎていたので、そのツケを背負ったというか。皆さんの期待も高かったですし、下手なことはできないという意識はありましたね。

そのあたりの事情もあり、オリジナル(FC版)を知る人には「こんなのFFIIIじゃないよ」と言われないようにしないといけないし、新規プレイヤーに対しては「こんな古くさいゲームやってられないよ」と言われないようにしないといけなかった。その両方をターゲットにするのは、大変でしたね。

開発スタッフの制作に向けた思い

浅野. 自分自身、オリジナル(FC版)が発売された頃は小学校3年か4年でしたが、はじめてプレイしたRPG、はじめてクリアしたRPGでもあったので、すごく思い入れがありました。さきほど紹介したマトリックスの現場のチームも非常に若いメンバーで、同じような思いで取り組むことができました。

手がけるにあたって一番気をつけたところ

田中. オリジナル(FC版)を知っているプレイヤーの方が見てまったくの別作品にしてはいけないし、かといってそのまんまの移植では、今の時代には厳しい。微妙なバランスといいますか。逆に昔プレイした方が思い描いているFFIII像って、当時のまんまじゃないと思うんですよ。16年の間に、脳内で最近のゲームとミックスされて、変化しているかもしれない。今、当時のFFIIIを見せたら「こんなんだったっけ?」と言われる可能性もありますよね。だから、リメイクするにあたっての手触り感を、私以上に浅野は特に気にしていましたね。
浅野. プレイ感というか、遊んだときの感触はかなり大事にしました。特に「両手に剣を持って16回ヒット、ザクザクザク」、という感触は、いちばん印象に残っていたので大事にしました。
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